教育機会確保法のほんとうの意義

 2016年、教育機会確保法が制定されました。(正式名:義務教育の段階に相当する普通教育の機会の確保に関する法案)この法律は「日本の義務教育は画一化しすぎていることに大きな課題があるから、フリースクールやオルタナティブスクールなどの学校外の学び方も義務教育の選択肢と認めて、もっと多様な教育があふれる社会にしよう」という、めちゃめちゃ画期的な趣旨のもと生まれた法律なのです!ところが現実問題としては、そんな趣旨がほとんど理解されていません。そこでこの法律について、少し掘り下げて考えたいと思います。

法案成立までの経緯
2001年:フリースクール全国ネットの発足(本部は東京シューレ内)
2012年:オルタナティブ教育法を実現する会の発足(東京シューレ内)
2014年6月:超党派フリースクール等議員連盟の発足(参加議員は50名)
2014年9月:安倍首相が東京シューレ訪問(10月には下村文科大臣が)
2015年9月:「義務教育の段階に相当する普通教育の多様な機会の確保に関する法案」通称「フリースクール法案」(座長試案の提出)
2016年12月:「義務教育の段階に相当する普通教育の機会の確保に関する法案」に修正通称「不登校対策法案」


 さて注目してほしいのは、教育機会確保法の制定を2001年から、いえ、そのずっと前から先導してきたのは、学校外の多様な学び場の発展を支えてきた東京シューレであり、フリースクール全国ネットであり、そこを中心として発足したオルタナティブ教育法を実現する会であったということです。
 学校外の学び場(フリースクール等)は、義務教育として認められていないがために、国からなんら財政支援がない、出席扱いにならない、通学定期も作れないなど、学校教育になじめない子ども達の居場所として、セーフティネットの役割を果たしてきたにも関わらず、社会的に正当に認知されず、さまざまな面で厳しい経営を強いられてきました。そうした状況を打開しようと、立ち上がった人々が心ある国会議員に呼び掛け、フリースクール等が社会的・財政的に正当な位置を得られるようにして、多様な教育あふれる国にしようと長年頑張ってきた訳です。2015年9月に提出された法案には多様なを冠していることからも、その意図が明らかに読み取れます。
 ところがこの通称「フリースクール法案」は、保守的な議員達によって潰されてしまいます。そして多様な学び方も義務教育のひとつの選択肢として認めていこうという、この法案の魂ともいうべき部分は残念ながら削除され、名称からも多様なという言葉が削除され、通称「不登校対策法案」として、制定されるに至りました。

 しかし、この法案の審議を進めてきた元文科相の馳浩議員らの最後の抵抗として、付帯決議として次の条項が付け加えられました。不登校の児童生徒が、いわゆるフリースクール等の学校以外の場において行う多様な学習活動に対しては、その負担の軽減のための経済的支援の在り方について検討し、その結果に基づき必要な財政上の措置を講ずること。

  教育機会確保法はこうして生まれました。法案を一読すれば、今までの不登校対策を法律として追認したにとどまり、なんら目新しいところがないことが分かります。しかしこの法律が誕生するまでの経緯を考えれば、今後、学校外の多様な学び方が義務教育の選択肢として認知される社会の実現を目指していることは明らかです。大切なのは、この法律のそもそもの趣旨を前提として、各条項を解釈し、知恵を絞って活用していくことなのです。
 最後に法案の成立に行政官として尽力してきた亀田徹氏(2014年フリースクール等を担当する日本初の視学官として、不登校の子どもへの支援策を推進。2017年に再度文科省を辞職)は、この法律の活かし方について2017.2.9に次のように述べています。(ヤフーニュースが削除される前に全文転記しておきます)

亀田徹氏

 安倍総理が「施政方針演説」の中で教育について繰り返し主張している内容をご存じでしょうか?「施政方針演説」とは、毎年、国会がはじまる1月や2月に国全体の方針を示すために総理が行う演説のことです。
 安倍総理は、フリースクールで学ぶ子どもたちを支援する、という内容をここ3年間、連続して「施政方針演説」の中で語っています。
 今年は教育分野のトップで、「フリースクールの子どもたちへの支援を拡充し、いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子どもたちが、自信を持って学んでいける環境を整えます」と訴えています。
 国会においても、不登校を認めるための法案の検討が2年ほど前に開始されました。不登校の場合には小中学校等へ通う以外にフリースクールや自宅での学習を選択でき、学校以外も義務教育として認めようという法案です。
 しかし、この法案に対しては、「まずは学校を充実させるべき」という意見や「学校に行かないことを安易に認めるべきではない」という反対意見が自民党や野党から出されました。
 たしかに、学校の充実は大切です。けれども、どうしても学校が合わない子どもがいれば、それはそれで多様な学び方を選択できたほうが子どもや社会のためになるのではないでしょうか。
 学校以外を選択できる法案に対する各党の消極的な姿勢を受け、法案は大幅に修正された上で、昨年12月に法律が成立しました。「教育機会確保法」という法律です(正式名称は「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」。本年2月14日から施行)。
 この法律の内容を見ると、フリースクールや自宅などの学校以外を選択できるという部分は削除され、代わりに、不登校に関する施策の推進が定められています。これまで学校や教育委員会が行ってきた支援策が並んでおり、とりたてて新たな施策が法律に盛り込まれているわけではありません。「教育機会確保法」が成立しただけでは、子どもをとりまく環境は変わらないと言ってもいいでしょう。
 不登校の子どもの環境をより良いものにするためには、この法律を活かす必要があります。保護者やフリースクールなどの関係者が、法律を使ってできる範囲で行動するのです。たとえて言えば、目的地に向かうために電車に乗ろうと思って駅に着いたら、電車は走っておらず、代わりに「教育機会確保法」という名前の自転車が置いてあった、というようなものです。目的地に到達するには、自分で自転車をこいで行かないといけません。目的地とは、学校以外の学習も認められる社会です。
 では、この法律を使うとは、どうすればいいのでしょうか。
 法律のポイントは3つあります。
 ひとつめは、休む必要性を認めていることです。「個々の不登校児童生徒の休養の必要性」を規定し、子どもの状況によっては何もせずに休むことも必要と法律は定めています。
 ふたつめは、子どもが学習できる状況になったときには、学校以外で学ぶことも重要であると認めていることです。「学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性」と法律では書かれており、フリースクールや自宅で学ぶことも重要とされています。
 みっつめは、連携の必要性です。行政とフリースクールとが連携すべきことを定めています。
 以上のようなポイントが法律で定められていることを、学校や自治体がまだ十分に理解していないことも考えられます。
 したがって、この法律を根拠にしながら、保護者やフリースクールなどの関係者が学校や自治体に対し積極的に働きかけていくことが大切です。
 たとえば、子どもの状況によっては一定期間、家で休むことが必要と保護者が考えるとき、「休むことの必要性は法律でも認められている」と学校やまわりの人に説明することができます。
 あるいは、フリースクールが行政と連携しようと思ったとき、「フリースクールと行政との連携が法律でも要請されている」と行政に提案することもできるでしょう。
 法律では、3年以内に法律の施行状況について検討し、見直しを含めた措置を講じることとされています。法律を活用して働きかけたとしても子どもをとりまく環境がどうしても変わらないのであれば、やはり当初考えていたように学校以外を選択できる制度の導入が必要ということになるかもしれません。
 それまでの間は、法律をどう活用したか、働きかけがうまくいった事例やいかなかった事例の積み重ねと共有が大事だと考えます。
「教育機会確保法」が成立したからといって、ただちに何かが変わるわけではありません。
 保護者やフリースクールなどの関係者が法律を活用し、不登校の子どもたちが安心して休んだり学んだりできる環境を自分たちでつくりあげることが求められているのです。https://news.yahoo.co.jp/byline/kamedatoru/20170209-00067510/

 

 

  

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