安部元首相の一件の根底にある社会のゆがみを見落とすな

 独紙「南ドイツ新聞」のトマス・ハン記者は、安倍元首相の殺害がなぜ起きてしまったのか、この死が何を意味するのかを考察している。日本にいると気づけない日本社会の課題点は、海外から見るとよく分かるのだろう。そして記事では語られていないが、驚くほど日本の学校教育のゆがみと重なることに気づく。この事件はまさに教育改革の必要性を私たちに突き付けているということに気づかなければならない

【以下、引用元であるCOURRiER Japonの記事を抜粋】
 犯人である山上徹也容疑者、何が彼をそのような行動に掻き立てたのか。ハン記者は、「彼が殺人犯になったのは、その不安定な人生がどうなるのか、誰も疑問にせず、気にかけなかったからだ」と述べる。
 そして今回の事件は、「制度に馴染めず、挫折した独身男性が、その不満をどうしたらいいかわからず、他人を攻撃する」という近年相次ぐ殺傷事件と類似するとしている。2016年の相模原障害者施設殺傷事件、2019年の京都アニメーション放火殺人事件、2021年の京王線殺傷事件などがその例だ。

 このような事件を引き起こす根底にあるのは、日本の社会のなかで、孤立してしまう人がおり、彼らを救済する仕組みがあまりないことだという。「南ドイツ新聞」は別の記事で次のように指摘する。
 「集団社会である日本では皆が社会に奉仕する自分の仕事をすることで、全体がうまくいき、誰も邪魔をしない。そこでは比較的スムーズに生活ができるが、人と違ったり、成功しなかったり、ルールやヒエラルキーに適応できない人は、このシステムのなかですぐ孤立する。個人的な苦労や悩みを相談できる場もあまりない
 社会のサポートシステムが充分ではない「日本では、家族がもっとも重要な支援を提供する。たとえば社会的困窮者に対しても、まず国はその人を助けられる親族を探し、家族で解決させようとする。しかし山上の場合は家庭が崩壊していた」。そのため彼を救えるものはなかった。宗教に傾倒したという山上容疑者の母親も、「夫を失い、建設会社を継ぎ、3人の子供を養わなければならなかった。一人で働く親への支援が少ない社会の中で、彼女は明らかに何らかの支援を求めていたのだろう」という。統一教会に惹かれた背景には孤独があったはずだ。
 「我慢するように育てられる日本人は、生計を立てるために多くを我慢して暮らし、不満を言わない。しかし、ある一線を超えると人々は非常に感情的になる」とハン記者は見ている。

 ハン記者は、日本は多くの美しさを持つ一方、狭苦しくてモノトーンで、「都市は商業に支配され、無表情だ」と書く。都市は「同じような家屋に埋め尽くされ、集団社会による全体の構造への同調圧力があり、問題は自分と家族で解決することが期待される
 無機質な中で、人の助けも充分には得られない都会。そこでは人と同じようにやることが求められ、一方でシステムから外れて問題を抱えると、自分達で解決しなくてはならずに困窮しがちなのだ。ここでいう日本のシステムとは、「会社の期待通りに働き続け、何があっても何も言わない」ことだとハン記者は続ける。日本の仕事は、「旧態依然としたヒエラルキーのなかで、勉強したことにはかかわらず、会社に自由に配置される従順な社畜」になるか、「安価な派遣契約」で働く労働者になるかが多い。

安倍元首相はさまざまな戦略を実行したように見せかけていたが、日本の「人々が暮らしやすくなるような制度改革はなく、人々の不満にも感心を示さなかった」と批判する。

「無関心、お金の追求、それらは多くの国で社会を蝕んでいる。しかし、日本ではそれらが少し極端に出てしまっているようだ」とハン記者は懸念している。というのは「日本人は、実はほとんど集団社会に奉仕する仕事にしか興味がなく、社会的な議論やマイノリティ、隣人などには関心がない」ためだ。
【引用元 COURRiER Japon】https://courrier.jp/news/archives/294511/

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